カラスウリの花
梅雨がまだ終わっていない日の宵の口、「珍しい花が咲くので、お出でなさいな」5号棟の、親しくしている方からお電話をいただいた。聞けば、夕方から咲き始めて翌朝には萎んでしまうらしい。
「月下美人ですか?」 なんとかの一つ覚えで訊いてみた。
「いいえ、烏瓜の花よ」
「カラスウリ?実は知っているけど、花も咲くのですか」
「実は赤いけど花は白で、レースの飾りのように広がっているの」
取りあえずカメラを手に、通りがかりの人もお誘いして、伺ってみた。暮れなずむ夕景の一角に、確かに真っ白なレース飾りのような、花があった。
子供の頃、見るからにおいしそうなカラス瓜の実を手に取って、「それは食べられないよ!苦い苦いよ」と祖母からきつい声で咎められた記憶とは、まるで繋がらない、幻想的で清楚な印象の花だった。あとで訊いてみると、結構多くの人が、この花を見たことがあるという。
80年余り生きてきて、ああ、まだまだ知らないことがいっぱいあるのだなあ、と珍しいものを見せていただいた5号棟の方に感謝しつつ、妙なところで感心させられた。
( 入居者M.N )
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