能面を観る

  【小面(こおもて)】                【増女(ぞうおんな)】            【般若(はんにゃ)】

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 能面展が守口市で開かれた。観た人は少ないと思うが、実はこの能面、じっくり観るとなかなか面白い。一番面白いのはやはり女性の面である。
 「小面(こおもて)」、これはお嫁入りの前のうら若い女性の面。箸がコロンでも笑い出しそうな表情が可愛い。
 その隣りが「増女(ぞうおんな)」。これはやや年配で、もう箸なんぞでは笑わない。しっかり者の顔。下手な冗談を云ったら、キッと睨み返されそうな表情をしている。
 次に面白いのが「般若(はんにゃ)」の面。これは角を立て口は大きく開いて見るからに恐ろしい顔である。実はこの面は、女性が、やきもちが昂(こう)じて、うらみと怒りに燃えている顔なのだ。やさしい女性が怒りに燃えるとかくも恐ろしい形相(ぎょうそう)になるかとこちらが青くなるが、ちょっと待った。この恐ろしい顔のどこかに悲しそうな、ちょっと淋(さび)しそうなものが漂(ただ)よっているではないか。いや、もっとある。作者によって歯を大きく作る人がある。これはもう嬉しくて嬉しくてたまらない、と云う表情が見てとれる。過ぎ去った良き日を思っているのか。
 1枚の面で、怒りと、うらみと、淋しさと、悲しみ、ひそかな喜びを含ませた表情に作り上げた面師(おもてし)の腕前、なんと見事なものではないか。
 私は能面の前に立っていると、いつの間にか生身の女性がそこに居るのではないか、という錯覚(さっかく)をする。

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※この本文中の能面展は「第19回能面展(能面文化協会主催)」、守口文化センターで開催されたものです。掲載のお面は、能面展のものとは異なり、参考のために載せています。

                           (入居者ペンネーム 菊池ひろし)

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