阿闍利餅
コロナ騒動がまるで嘘のような、爽やかで豊かな日差しの溢れる
五月七日、喫茶「白川」で阿闍梨餅専売の催しがあった。
このお菓子は、その形が比叡山で修行する阿闍梨(高僧の意)の網代笠を模し
たものと伝えられており、古く大正のころから親しまれている、京都を
代表する銘菓の一つである。
少し以前、テレビの人気番組であった「水戸黄門」で、主役を務めていた
里見浩太朗が別の番組で、「京都へ来たときは、必ず阿闍梨餅を土産に
買って帰る」と言っていた場面を思い出し、もしもその時代に存在したと
すると、黄門さんもこのお菓子を愛用したかもしれないなと、妙なところ
に思いを馳せた。 コロナ騒動の所為で、すべてのイベントやサークル活動の中止をはじめ、
対面での会話や、人の動きまでも制限されているため、
多くの入居者の気分も沈みがちな中、
この企画はほっとするひと時を提供する効果があったように覚えた。 それというのも、中には「私が買い占めたから、あんたの分はもう無い
よ」などと冗談をいう人がいたりして、この銘菓を求めるため「白川」を
往来する人達の表情が、一様に明るく楽しげであった。
ささやかな催しであったが、齎された効果はささやかではなかったよう
だ。
(入居者N・M)
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